独立開業する美容外科医が後を絶たない理由|独立後の意外な課題や倒産リスク
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美容外科は年々競争が激化しており、大手美容外科に勤務する医師たちの独立開業が後を絶ちません。独立開業にはリスクも伴いますが、自分の腕を最大限に活かした治療を提供できることから、多くの美容外科医が独立を決意しています。
本記事では、大手美容外科から独立開業する美容外科医が多い理由と、美容外科として生き残るためのポイントについて解説します。
大手美容外科から独立開業する美容外科医が多い理由

美容外科医が大手美容外科から独立して開業する理由は、さまざまな要因が絡み合っています。主に以下の点が挙げられます。
1. 収入の増加を目指して
美容外科医が独立を決断する最大の理由の一つは、収入の増加を目指しているからです。大手美容外科で勤務している場合、給料は固定されていることが多く、一定の上限が存在します。
しかし、独立開業することで、集患が順調に進んだ場合、売上の全額を自分で管理できるため、収入の上限がなくなります。特に美容外科は、施術料金が高めに設定されることが多いため、患者数が増えれば収入も飛躍的に増加する可能性があります。
2. 自由な働き方を求めて
勤務医として働く場合、勤務時間やシフトなどに縛られることが多く、プライベートな時間の確保が難しくなります。
一方、独立開業することで、診療時間や勤務スタイルを自由に決めることができ、仕事とプライベートのバランスを取ることが可能です。特に美しく健康的なライフスタイルを重視する美容外科医にとって、柔軟な勤務形態は大きな魅力となります。
3. 自分の医療理念を追求したい
美容外科医の中には、患者様に対するアプローチや医療理念に強いこだわりを持つ人も多いです。大手美容外科では、企業の方針やルールに従わなければならないことがあり、自分の医療理念を存分に反映させることが難しい場合もあります。
独立することで、医師としての自分の理想を追求し、一人の患者様のオペにかけられる時間も自分の采配で調整でき、患者様に安全かつ最適な治療を提供できる環境を整えることができます。
4. 個人の医師としての差別化やブランド化
美容外科医として独立することで、自分の名前やクリニックをブランド化することができます。大手美容外科に勤務していると、個人の医師としてのブランドを築くことが難しいですが、独立すれば患者様との信頼関係を築きやすく、口コミやSNSを活用して自分の専門性をアピールすることができます。個別の施術や治療法に特化し、自分の差別化を図ることが可能になります。
5. 経営の自由度とスキルアップの天井がない
独立開業にはリスクが伴いますが、経営者としての自由度が増す点も魅力の一つです。自分の経営スタイルに合わせてマーケティングやスタッフの採用、設備投資などを行うことができ、柔軟に戦略を変更することが可能です。
また、開業後は経営者としてのスキルやノウハウを高めることができ、ビジネスの成功に向けた成長を感じやすくなります。
6. 開業へのハードルが下がっている
独立開業をサポートするためのサービスや支援も増えており、これが開業を後押ししています。例えば、開業支援を行っている専門機関や美容外科の業界団体があり、技術的なサポートや経営的なアドバイスを受けることができます。開業後も、業界内でのネットワーク作りや医療技術の向上に力を入れることができるため、安定した経営を維持しやすくなります。
7. 患者様との深い信頼関係を築ける
独立開業により、患者様との密接な関係を築くことができます。大手美容外科では、治療が標準化され、個別のニーズに応える余裕が少ないことがありますが、開業医であれば、より一人ひとりの患者様に寄り添った診療が可能です。患者様にとっても、担当医が変わらず、長期間にわたって信頼できる医師と治療を続けられることが大きなメリットです。
美容外科医が独立後に直面する意外な課題

大手の美容外科で働いていた医師が独立開業を決意した場合、最初は順調に進んでいるように思えても、予想外の問題に直面することが多いです。特に、採用、法務、仕入れ、テナント家賃の管理は、独立後に困ることが多い分野です。以下に、その具体的な理由を解説します。
1. 採用
大手クリニックでは、すでに優秀なスタッフが揃っているため、採用活動に対する意識が薄くなることがあります。
しかし、独立後は自分自身でスタッフを採用しなければならず、適切な人材を見極める目と労力が求められます。スタッフの採用ミスがクリニックの運営に大きな影響を与えるため、この段階での慎重な判断が欠かせません。
2. 法務
法務面に関しても、開業前にしっかりとした知識を持っていない場合、後々トラブルになることがあります。契約書の作成や労働法、医療法規の遵守について、十分な準備が整っていないと、予期せぬ法的問題が発生する可能性があります。開業時には専門家のアドバイスを受けることが重要です。
3. 仕入れ
美容外科には、医療機器や薬品、消耗品などさまざまな物資が必要です。大手では仕入れのルートや交渉力が強いため、安定した供給が確保されています。
しかし、独立後は仕入れの管理やコスト調整が自分の責任となり、価格交渉や仕入れ先の選定に失敗すると、運営に支障をきたすことになります。効率的な仕入れルートを確保することが、経営の安定には不可欠です。
4. テナント家賃
テナントの選定と家賃の管理も、独立開業時に直面しやすい問題です。大手ではクリニックの規模に応じた立地選びが行われており、賃貸借契約における契約形態の是非や賃料相場の判断も慣れていますが、独立後は立地条件や家賃の相場を見誤ってしまうケースがあります。過剰な家賃を支払い続けると、収益が圧迫されるため、慎重に物件選定を行う必要があります。
これらの問題を甘く見ていると、開業後に取り返しがつかない事態に陥りかねません。慎重に準備を進めることで、安定した経営を実現することが可能です。
美容外科業界で深まる、醜い蹴落とし合いの現実

「患者様を美しくする」という本来の使命を忘れ、ライバル潰しに奔走する美容外科医たち。近年では、症例写真の盗用やSNS上での誹謗中傷、不正なレビュー投稿など、倫理に反する行為が業界内で横行しているのが現状です。
例えば、自院で手がけた手術例を、無関係なクリニックがあたかも自らの実績であるかのように広告に使用するといった事例も珍しくありません。
また、他院の成功例を模倣し、患者様を誘導しようとする不正行為も目立っています。
さらにSNS上では、
- 他院の評判を落とすための隠語による誹謗
- 成功を装ったやらせレビューの投稿
- 暴露系インフルエンサーによるクリニックの晒し行為
といった情報操作が散見され、患者様よりもライバルの動向を注視する医師が増えている状況です。
本来、技術力と誠実な対応によって信頼を得るべき医療業界において、蹴落とし合いを優先する風潮が広がっていることは、深刻な問題と言えるでしょう。
これからの美容外科はどうなる?
現在、美容外科業界は「価格破壊の地獄絵図」に突入する危険性を孕んでいます。
例えば、「当院の二重整形、〇〇円引き!」 → すぐ隣のクリニックが「それよりも安価で提供!」 「無料カウンセリングで〇〇をプレゼント!」 → そのうち「手術を受けたら、無料で旅行券を贈呈!」などと医療広告ガイドラインに抵触した集客方法を繰り広げている場合もあります。
気がつけば、美容外科の価格競争は、まるで牛丼チェーン店の値下げ合戦のような状況に陥りかねません。このような過酷な競争の中で生き残るためには、何が求められるのでしょうか?
誠実な経営(短期的な儲けではなく、長期的な信頼)
価格競争に陥らないためには、短期的な利益追求に走るのではなく、患者様との長期的な信頼関係を築くことが重要です。信頼されるクリニックは、患者様の満足度を重視し、無理に安価なサービスを提供するのではなく、質の高い施術を提供することが大切です。
技術力の向上(価格競争ではなく、質で勝負)
価格を安く設定することが競争優位になるわけではありません。むしろ、技術力の向上に注力し、患者様に確かな結果を提供することが重要です。高い技術力を持つ美容外科医は、価格競争に巻き込まれることなく、患者様に安心感を与えます。
透明性のあるマーケティング(誇張広告ではなく、リアルな情報発信)
誇張広告や過度な宣伝で患者様を引きつけるのではなく、リアルで正確な情報を発信することが信頼を得る鍵です。患者様に正直な情報を提供することで、クリニックの評判を高め、無駄な価格競争を避けることができます。
結局、どれだけ安くても、どれだけSNSで再生数を伸ばしても患者様が「ここなら安心」と思えるクリニック「患者様のための美容外科医」が生き残るのです。
まとめ
美容外科医が大手美容外科から独立して開業する理由は、主に収入の増加、自由な働き方、自分の医療理念の追求、ブランド化や差別化の実現、経営の自由度の向上など、さまざまな要素が絡み合っています。しかし、独立後には採用、法務、仕入れ、テナント家賃の管理といった課題が待ち受けており、これらの問題に対処するためには慎重な準備と対策が必要です。
また、美容外科業界が今後直面する可能性のある「価格破壊」の競争環境においては、誠実な経営、技術力の向上、透明性のあるマーケティングが求められます。価格競争に巻き込まれず、患者様との信頼関係を築くことが、クリニックの長期的な成功に繋がります。
最終的には、質の高い施術を提供し、患者様に安心感を与えることが、競争を勝ち抜くための鍵となるでしょう。