ドバイの医療ライセンスは「王族ルート」で取得できる?実際にクリニックを開院した当社が伝えたい注意点

公開日:

Luxurious palace at sunset with a grand central arch, domes, and palm-lined courtyards illuminated by warm lights

「ドバイの王族とつながっています」

「政府関係者に話を通せます」

「普通では難しい医師免許もスムーズに取得できます」

「ライセンス取得のハードルを下げられます」

「全身麻酔のような難しい許可も、影響力のある人なら何とかできます」

海外、特にドバイで医療事業に関わっていると、ときどきこのようなお話を耳にします。

これからドバイで医師・歯科医師・看護師として働きたい方であれば、

「本当にそんな特別な世界があるの?」

と思われるかもしれません。

株式会社ヒューマンリソース(以下、当社)は、実際にドバイでTokyo Cosmetic Surgery LLCの開院に携わりました。

その経験があるからこそ、実体験を交えてお伝えできることがあります。

先に結論からお伝えすると、「人脈」が悪いわけではありません。

海外では、信頼できる人とのつながりはむしろ大切です。

ただし、

「特別な人脈さえあれば、医療のルールまで何とかできる」

という話については、かなり慎重に見た方がいいと考えています。

なぜなら当社自身、ドバイでクリニック開院に苦労していた一番大変な時期に、

「普通のルートでは難しい。でも、特別な人脈を使えば何とかできる」

という趣旨のお話を実際に持ち込まれたからです。

提示された金額は、5,000万円でした。

その後、当社の関係者はBurj Al Arabへ案内され、「王族関係者」という趣旨で紹介された方々と実際に挨拶することになります。

さらに数年後には、美容外科医の先生から、

「ドバイの医師免許を取得できると言われて800万円を振り込んだ。その後、相手と連絡が取れなくなった」

という相談も寄せられました。

そして最近になって、また別のルートから、

「王族とのつながりで医療ライセンス取得をスムーズにできる」

という趣旨のお話が届きました。

なお、これらはすべて別の案件であり、同じ人物でもありません。

また当社は、これらの情報だけをもって特定の人物が詐欺などの犯罪行為を行ったと断定する立場でもありません。

では、なぜこの話を書くのか。

理由は一つです。

海外の医療ライセンスで一番困っているときほど、「特別なルート」という言葉が、とても魅力的に聞こえてしまうからです。

これはクリニックを開院する経営者だけのお話ではありません。

これからドバイで医師として働きたい方。

歯科医師として働きたい方。

看護師として働きたい方。

海外で医療に挑戦するすべての方に、ぜひ知っておいていただきたいお話です。

Arab News掲載の舞台裏――ドバイ開院までに直面した厳格な審査

Tokyo Cosmetic Surgeryのドバイ開院については、2023年5月、Arab News Japanにも取り上げていただきました。

2023年4月25日、Al Barsha Mallでオープニングセレモニーを開催し、中東初の拠点として開院したことなどが紹介されています。

Arab News Japan「Tokyo Cosmetic Surgery opens first branch in Middle East」

記事の写真を見ると、とても華やかです。

実際、オープニングの日は華やかでした。

しかし、その日を迎えたときの気持ちは、

「ドバイ進出、成功!」

というより、

「やっと……ここまで来た」

に近かったと思います。

なぜなら、そこまでが長かったからです。

Arab News Japanの記事にも、当初予定していた時期より開院が遅れ、ドバイの保健当局による厳格なInspectionを経て、ライセンス取得後に開院した経緯が記録されています。

実際の現場では、

提出する。

戻ってくる。

直す。

また提出する。

その繰り返しでした。

「今度こそ大丈夫でしょう」

と思ったら、また指摘。

「これで最後ですよね?」

と思ったら、また修正。

医師側のライセンスだけではありません。

クリニックそのものについても、設備や図面、施設としての要件を確認されます。

こちらも何度も差し戻されました。

今ならこうして書けますが、当時はなかなか笑えませんでした。

厳格な制度の先で実感した、ドバイで出会った人たちの温かさ

ここは、このコラムで誤解していただきたくないところです。

ドバイでの開院は大変でした。

しかし、

「ドバイだから大変だった」

「現地の人に困らされた」

というお話ではありません。

むしろ反対です。

現地の医療機器業者の皆様には、本当に何度も助けていただきました。

必要な設備を確認する。

条件に合う医療機器を探す。

細かな調整をする。

問題が出たら、また一緒に考える。

日本とは制度も商習慣も違う中で、当社と一緒に一つずつ進めてくださいました。

クリニックが入居したAl Barsha Mallの皆様にも、とても温かく迎えていただきました。

外国から進出してきた当社に対して、一緒にオープンまで進んでいこうという雰囲気で支えてくださったことは、本当に心強いものでした。

当社が実際にドバイで感じたのは、

「制度は厳格。でも、人は温かい。」

ということでした。

そして今振り返ると、ここにとても大切な違いがあったと思います。

本当に助けてくださった現地の方々は、

「審査なんて、こちらで何とかします」

とは言いませんでした。

「この設備が必要です」

「ここを修正しましょう」

「この条件を満たしましょう」

「もう一度提出しましょう」

と、一緒に正規のプロセスを進めてくださいました。

つまり、本当に価値のある現地サポートとは、

「審査をなくしてくれる人」ではなく、「審査を通過するために必要なことを一緒に整えてくれる人」

だったのです。

「医師免許さえ取れれば終わり」ではない

ドバイ進出を考えている医師の方から、

「ドバイの医師免許を取るのは難しいですか?」

と聞かれることがあります。

もちろん、Professional Licenseの取得は重要です。

しかし、実際にクリニックを立ち上げてみると、それだけではありませんでした。

医療従事者側のライセンス取得と、クリニックそのものを開院することは別のお話です。

医師側のライセンスが進んでも、その翌日からクリニックを開けるわけではありません。

Facility側にも許認可があります。

図面。

設備。

施設要件。

Inspection。

当社は、こちらでも何度も修正や差し戻しを経験しました。

そのため、クリニック開設を考えている方には、

「医師免許を取ること」と「クリニックを開院すること」を最初から分けて考える

ことをおすすめします。

個人でドバイで働きたい医師・歯科医師・看護師の方の場合も同様です。

大切なのは、

「ドバイのライセンスが取れます」

という大きな言葉ではありません。

「自分の場合は、どのAuthorityに、どのProfessional Titleで、どのような手続きが必要なのか」

そこまで具体的に確認することです。

一番苦しいときに「5,000万円」の話…

海外でクリニックの開院が遅れると、何が起きるのでしょうか。

法人は設立しています。

物件も借りています。

内装にもお金をかけています。

医療機器も準備しています。

スタッフもいます。

家賃も出ていきます。

人件費も発生します。

しかし、許認可が終わらなければ患者様を診ることができません。

つまり、

クリニックはある。

でも、開けられない。

経営者にとって、これはかなり苦しい状態です。

一日、一週間、一か月。

時間が経つほど、お金だけが出ていきます。

そんな一番困っていた時期に、

「何とかできる人がいます」

というお話が来ました。

普通に進めるのは難しい。

でも特別な人脈がある。

影響力のある人物につなぐことができる。

そういった趣旨のお話でした。

そして提示された金額が、

5,000万円。

500万円ではありません。

5,000万円です。

普通なら、

「高すぎるでしょう」

で終わる話かもしれません。

ところが、海外進出では少し事情が違います。

すでに大きな資金を投じています。

開院がさらに数か月遅れれば、その間も固定費は出ていきます。

そう考えると、一瞬、

「本当にこれで解決するのであれば……」

という経営上の選択肢に見えてしまうことがあります。

ここが怖いところです。

人は余裕があるときより、一番困っているときの方が、「近道」という言葉に弱くなる。

これは、当社自身の経験から感じていることです。

そして、Burj Al Arabへ

5,000万円というお話だけなら、まだ分かりやすかったかもしれません。

ところが、ここから急に映画のような展開になります。

当社の関係者は、Burj Al Arabへ案内されました。

そこで、

「王族関係者」

という趣旨で紹介された方々と、実際に挨拶しました。

白い伝統衣装。

豪華な吹き抜け。

金色を基調とした内装。

世界的に知られる高級ホテル。

そして、

「王族」

「特別な人脈」

「普通では難しい許認可」

という言葉。

これだけ揃うと、

「もしかすると、本当に自分たちの知らないドバイの世界があるのかもしれない」

と思わせるだけの雰囲気があります。

実際、そのときの写真も残っています。

ただし、ここははっきり書いておきます。

当社は、その方々が本当に王族だったのか確認できていません。

現地の伝統衣装を着ていること。

Burj Al Arabで会ったこと。

誰かから「王族関係者」と紹介されたこと。

そのどれも、それだけで王族であることの証明にはなりません。

そして、さらに重要なのは、

仮に本当に王族と関係のある方だったとしても、「王族とつながっていること」と「医療ライセンスの審査基準を変こは混同しない方がいいと思います。

「王族と知り合いです」と言われた時の対処法

「王族と知り合いです」

そう言われても、当社は最初から嘘だと決めつけるつもりはありません。

本当にそうかもしれません。

政府関係者や王族関係者とのネットワークを持つ方も、実際にいらっしゃるでしょう。

しかし、医療ライセンスのお話なら、今ならその次に聞きます。

「それで、私の申請は現在どこまで進んでいますか?」

王族と写真を撮った。

王族と食事をした。

王族のオフィスへ行った。

それよりも先に確認したいことがあります。

・PSVはどうなっていますか
・DataFlowのCase Numberはありますか
・どのProfessional Titleで申請していますか
・Assessmentは必要ですか
・必要ないのであれば、その根拠は何ですか
・どのAuthorityへの申請ですか
・クリニックならFacility側はどこまで進んでいますか

医療の許認可で重要なのは、

「誰を知っているか」ではなく、「規制当局が何を承認しているか」

だからです。

ドバイの医療ライセンス取得要件は、医師・歯科医師・看護師で異なる

ここは、これからドバイで医療従事者として働きたい方に、特に知っておいていただきたい部分です。

医師。

歯科医師。

看護師。

当然ながら、すべて同じ条件でライセンスが発行されるわけではありません。

さらに同じ医師でも、Professional Title、保有資格、臨床経験等によって確認すべき要件は変わります。

DHAでHealthcare Professionalとしてライセンス取得を進める場合、資格や経歴についてPrimary Source Verification(PSV)が行われ、公式のライセンスプロセスではDataFlowによる確認が組み込まれています。

Assessmentについても、申請するTitleや資格等によって必要性が異なります。

ここで一つ注意していただきたいのは、

「CBTを受けていない=絶対にライセンスが出ない」

と一律には言えないことです。

Assessmentが必要かどうかは、申請条件によって異なります。

大切なのは、

必要なのであれば受ける。

不要なのであれば、なぜ不要なのか制度上の根拠を説明できる。

ということです。

「この資格、この経歴、このProfessional Titleなので、この要件に該当します」

という説明なら理解できます。

ところが、

「先生は特別なので大丈夫です」

「王族ルートなのでAssessmentは関係ありません」

と言われたらどうでしょうか。

当社なら、

「それは、どの制度の、どの規定に基づいているのでしょうか?」

と確認します。

「DHCの医療資格」という言葉から見えた、見逃せない違和感

最近、当社に持ち込まれた「王族とのつながりでライセンス取得をスムーズにできる」という趣旨のお話には、もう一つ気になる点がありました。

その説明の中に、

「DHCの医療資格」

という趣旨の表現が出てきたのです。

おそらく、DHAあるいはDHCCを指しているものと思われます。

ただ、ここは当社として、

「ちょっと待ってください」

となったポイントでした。

なぜなら、医療ライセンス取得を専門的にサポートできるという立場なのであれば、DHAとDHCCの区別は最初に整理しておくべき基本的な部分だからです。

もちろん、単純な言い間違いや伝言過程での誤記である可能性もあります。

ですから、

「DHCと言った=怪しい人」

と断定するつもりはありません。

ただ、

DHAなのか。

DHCCなのか。

どのAuthorityなのか。

どのProfessional Titleなのか。

どの資格がPSVの対象になるのか。

Assessmentは必要なのか。

こうした基本的な制度の話が曖昧なまま、

「王族につながっています」

「ライセンス取得のハードルを下げられます」

「普通よりスムーズにできます」

と言われたら、当社としては専門性をかなり慎重に確認します。

特に、

DHAとDHCCの違いが曖昧な人が、「ライセンス取得のハードルを下げられる」と断言する。

この組み合わせには、違和感を持ちます。

本当に医療ライセンスの実務を理解しているのであれば、王族のお話より先に、

「今回はDHAです」

「このProfessional Titleです」

「この資格についてPSVが必要です」

「Assessmentについてはこの条件です」

という話になるはずだからです。

だから今、当社が一つの判断材料にしていることがあります。

「王族の説明より先に、制度の説明が出てくるか。」

とてもシンプルですが、大切なポイントだと思っています。

実務を本当に理解している人ほど、話は具体的で地道

これは、当社が実際にドバイで開院して分かったことの一つです。

本当に実務を理解している方のお話は、驚くほど地味です。

「先生の臨床経験は何年ですか?」

「どの資格をお持ちですか?」

「専門医資格はありますか?」

「Good Standingは取得できますか?」

「この資格をPSVに出しましょう」

「このProfessional Titleで確認しましょう」

「この設備が必要です」

「ここを修正しましょう」

こういうお話です。

華やかさはありません。

王族も出てきません。

高級ホテルも必要ありません。

でも、医療の許認可実務とは、本来そういうものです。

当社を助けてくださった現地の医療機器業者の方々もそうでした。

魔法のようなお話はしません。

必要な機器を確認する。

条件に合うものを探す。

準備する。

問題があれば調整する。

一つずつです。

だからこそ信頼できました。

反対に、こちらの資格や臨床経験をほとんど確認していない段階から、

「絶対に取れます」

「普通より簡単にできます」

「ハードルを下げられます」

「王族に話を通せます」

と言われたら、一度こう考えてみてください。

「まだ私の資格も経歴も見ていないのに、どうして取れると分かるのでしょう?」

数年後、美容外科医から届いた「800万円」の相談

数年後、美容外科医から届いた「800万円」の相談

ある美容外科医の先生から、当社に相談が寄せられました。

先生のお話によると、

「自分が動けばドバイの医師免許を取得できる」

という趣旨の説明を受けたそうです。

そして、

医師免許取得費用として800万円を振り込んだ。

その後、相手と連絡が取れなくなった。

というご相談でした。

当社には、その内容が書かれた実際の相談LINEも残っています。

ただし、この相談内容だけをもって、

「相手方が詐欺をした」

と当社が断定するものではありません。

契約内容も確認する必要がありますし、相手方にも説明や主張がある可能性があります。

一方で、

「ドバイの医師免許を取得できると言われて800万円を振り込み、その後、相手と連絡が取れなくなった」と訴える美容外科医から、当社に実際に相談が寄せられた。

これは事実です。

当社が経験した5,000万円の話とは別件です。

人物も案件も異なります。

それでも、

「海外のライセンスで困っている医師の前に、“私なら何とかできます”という人が現れる」

という構図には、注意が必要だと感じています。

再び持ち込まれた「王族ルート」の話

さらに最近、別のルートから当社に連絡がありました。

内容を匿名化してまとめると、

「ドバイやアブダビの王室関係者とつながっている」

「日本企業のドバイ進出をアテンドしている」

「パートナーがドバイで王族と仕事をしている」

「医療ライセンス取得をスムーズにできる」

「ライセンス取得のハードルを下げられる」

「全身麻酔などの難しい問題にも対応できる人物がいる」

という趣旨のお話でした。

ただ、具体的な制度の話になると、先ほどの「DHC」という表現も含め、当社としては確認したい点がいくつもありました。

だから、

「王族とつながっている」

という情報そのものより、

「この人は本当に制度を理解しているのか?」

を確認する方が、はるかに重要だと考えています。

「5,000万円」の中身を分解する――高額費用で確認すべきポイント

もし高額な費用を提示されたら、金額の大きさに圧倒される前に、一度その金額を分解してみてください。

「5,000万円です」

と言われたら、

「その5,000万円は、具体的に何の費用ですか?」

と聞けばいいのです。

高額な費用を提示されたときに確認したいこと

高額な費用を提示された場合は、金額だけを見るのではなく、「何に対して、誰へ、いくら支払うのか」を一つずつ確認することが大切です。

・AuthorityへのOfficial Feeはいくらなのか
・PSVはいくらなのか
・Assessmentはいくらなのか
・Facility関連費用はいくらなのか
・コンサルティングフィーはいくらなのか
・成功報酬はいくらなのか
・紹介料は含まれているのか
・誰に支払うのか
・個人口座なのか、法人口座なのか
・契約先法人のTrade Licenseは確認できるのか
・Invoiceは発行されるのか
・取得できなかった場合はどうなるのか

可能な限り、書面に残してください。

もし、

「王族案件なので書面にはできません」

「特別ルートなので記録を残せません」

「細かいことは気にしなくて大丈夫です」

と言われたのであれば、高額なお金を動かす前に、一度第三者へ確認することをおすすめします。

「王族との写真」より、確認してほしいもの

海外では、「信用」を演出する材料がたくさんあります。

高級ホテル。

高級車。

豪華なオフィス。

有名人との写真。

政府関係者との写真。

王族との写真。

実は当社にも、Burj Al Arabで「王族関係者」という趣旨で紹介された方々と撮影した当時の写真が残っています。

ただ、このコラムにその方々の顔写真を掲載することは控えます。

理由は単純です。

その方々が本当に王族だったのか、当社では確認できていないからです。

また、その方々自身が何を聞いてその場にいたのかも分かりません。

この記事の目的は、

「この人が怪しい」

と誰かを晒すことではありません。

お伝えしたいのは、何を「信用の証拠」にするべきなのかということです。

王族との写真より、自分で確認できる申請記録。

高級ホテルでの面会より、Authority側の正式な手続き。

「絶対に大丈夫」という言葉より、制度上の根拠。

医療の許認可では、こちらの方がずっと大切です。

「コネ」よりも高く売られるもの――それは“希望”かもしれません

当社が実際にドバイでクリニックを開院し、その後さまざまな相談を受ける中で感じていることがあります。

海外進出や海外ライセンス取得で高く売られるものは、

「コネ」そのものではないのかもしれません。

「あなたが今困っているその問題を、自分だけは解決できます」

という“希望”なのかもしれません。

クリニックを開院する人なら、

物件も借りた。

設備も入れた。

スタッフも採用した。

家賃も出ていく。

でも開院できない。

個人で海外就職を目指す医師・歯科医師・看護師なら、

英語も勉強した。

必要な書類も集めた。

日本での仕事も調整した。

将来の生活まで考えた。

それなのに、ライセンスが進まない。

そんなときに、

「大丈夫です」

「私ならできます」

「特別なルートがあります」

「王族につながっています」

と言われる。

魅力的に聞こえてしまうのも無理はありません。

医師だから騙されない。

歯科医師だから大丈夫。

看護師だから関係ない。

経営者だから見抜ける。

海外経験があるから大丈夫。

そんな単純なお話ではありません。

だからこそ、覚えておいていただきたいのです。

医療の許認可に必要なのは、

希望ではなく、正式な承認です。

そして最後に、もう一人の忘れられない人

ここまで読むと、

「では、“王族”を持ち出す人にだけ気をつければいいのでしょうか?」

と思われるかもしれません。

実は、そう単純でもありません。

当社がドバイで開院準備をしていたころ、もう一人、とても印象に残っている方がいました。

現地のエジプト人アドバイザーです。

この方は日本語がとても上手でした。

というより、ほぼペラペラ。

コミュニケーションもスムーズで、とても親身。

当社がライセンスや許認可で苦労していると、

「“王族だから何とかなる”というような話は信用しない方がいい」

という趣旨で、むしろ当社を心配してくれました。

「ちゃんとDHAと話をした方がいい」

と、一生懸命DHAとのやり取りにも関わってくれました。

こちらとしては、

「そうそう。こういう人を探していたんです」

という気持ちになります。

王族の話を持ち出さない。

むしろ王族ルートを警戒するよう言ってくれる。

日本語も話せる。

現地事情も分かっている。

そして、DHAにも親身になって動いてくれる。

当社としても、

「こういう方なら信頼できる」

と思っていました。

実際、助けていただいたこともありました。

だから、この方について悪く言うつもりはまったくありません。

ところが。

最後の最後に、その方から言われました。

「お金を貸してもらえませんか?」

……。

結局、最後はお金の話でした(笑)。

ここまでくると、もう少し笑ってしまいます。

もちろん、

「お金を貸してと言った=悪い人」

ということではありません。

本当に困っていたのかもしれません。

実際、当社のために一生懸命動いてくださったことも事実です。

だからこそ、このエピソードは少し複雑で、そして忘れられません。

王族を名乗る人だけが分かりやすく怪しいわけではない。

本当に親切な人もいます。

本当に助けてくれる人もいます。

途中まで何の問題もなく、むしろ信頼できる人もいます。

でも海外では、ときどき、

仕事の関係と、個人的なお金の関係が、いつの間にか混ざってくる。

これも、実際に現地で事業をしてみて学んだことの一つでした。

ドバイで学んだのは、「疑うこと」ではなく「確認すること」

このコラムを読んで、

「では、海外では誰も信用しない方がいいのですか?」

と思われるかもしれません。

当社は、そうは思っていません。

むしろ逆です。

当社がTokyo Cosmetic Surgery LLCを開院できたのは、現地の方々の協力があったからです。

医療機器業者の皆様。

Al Barsha Mallの皆様。

DHAとのやり取りを手伝ってくださった方々。

開院まで一緒に動いてくださった多くの現地関係者の皆様。

本当にたくさんの方に助けていただきました。

海外では、人とのつながりはとても大切です。

でも、

「良い人そうだから信用する」

「王族と知り合いだから信用する」

「日本語が話せるから信用する」

「親身になってくれたから信用する」

それだけではなく、

仕事は仕事として、制度・契約・お金を分けて確認する。

それが大切なのだと思います。

王族との写真より、正式な申請記録。

高級ホテルでの面会より、Authorityの承認。

「絶対に取れます」という言葉より、制度上の根拠。

そして、

「すごく良い人だから大丈夫」より、契約とお金の流れを明確にすること。

当社が実際にドバイでクリニックを開院して学んだことは、結局そこでした。

これからドバイで医師・歯科医師・看護師として働きたい方へ

ドバイは、とても魅力的な場所です。

当社は、ドバイ進出を怖がっていただきたくてこの記事を書いているわけではありません。

むしろ、正しい制度を理解し、信頼できる方々と進めれば、日本の医師・歯科医師・看護師が活躍できる可能性は十分にあると考えています。

ただ、もし、

「特別なルートがあります」

「王族につながっています」

「普通より簡単にライセンスが取れます」

と言われたら、一度確認してみてください。

どのAuthorityですか?

どのProfessional Titleですか?

PSVはどうしますか?

Assessmentは必要ですか?

その費用は、何に支払うお金ですか?

そして逆に、

とても親切で、

日本語も上手で、

こちらのために一生懸命動いてくれる人に出会ったとしても、

仕事と個人的なお金の話は分けて考える。

これも大切です。

当社は、

5,000万円の「特別ルート」の話を聞き、

Burj Al Arabで「王族関係者」という趣旨で紹介された方々に会い、

800万円を振り込んだ後に連絡が取れなくなったという美容外科医から相談を受け、

最近では、

「DHCの医療資格」

という少々不思議な言葉とともに、また「王族ルート」のお話を聞きました。

そして最後には、

「王族なんて信用しない方がいいですよ」

と親身になってくれていた現地アドバイザーから、

「お金を貸して」

と言われました。

ここまでくると、少し笑うしかありません。

でも、こうした経験があるからこそ、当社は今こう考えています。

ドバイで必要なのは、誰かを疑い続けることではありません。

誰を信用するときにも、

制度と契約とお金の流れだけは、自分自身でも確認できる状態にしておくこと。

人は温かい。

人脈も大切。

本当に助けてくれる人も、たくさんいます。

でも最後に自分を守ってくれるのは、

「この人は良い人だから」

ではなく、

「これは正式な手続きです」

と確認できることです。

王族との写真より、正式な承認。

「絶対大丈夫」という言葉より、制度上の根拠。

華やかな近道より、少し地味でも確かな道。

そして、もし誰かに、

「特別なルートがあります」

と言われたら――

まず王族との写真を見る前に、申請書類を見てください。

そして、

「お金を貸して」

と言われたら――

そこは医療ライセンスとはまったく別のお話として、冷静に考えてください(笑)。

それが、実際にドバイでクリニックを開院した当社が、これからドバイで医師・歯科医師・看護師として働きたい皆様、そしてクリニック開院を目指す皆様にお伝えしたいことです。

【参考情報】
Tokyo Cosmetic Surgery LLCのドバイ開院については、Arab News Japan「Tokyo Cosmetic Surgery opens first branch in Middle East」をご参照ください。

Professional LicenseやHealthcare Facilityの制度・要件については変更される可能性があるため、実際の申請時にはDubai Health Authority(DHA)公式サイトなど、各管轄当局が公表する最新情報を必ず確認することをおすすめします。

まとめ

ドバイで医療ライセンス取得やクリニック開院を目指す際、人脈や現地のサポートは非常に重要です。

しかし、「王族とつながっている」「特別なルートがある」「普通より簡単に取得できる」といった言葉だけで判断するのはおすすめできません。

大切なのは、

誰を知っているかではなく、どのAuthorityに、どのProfessional Titleで申請し、どのような要件を満たし、正式に承認されているのかを確認することです。

高額な費用を求められた場合には、Official Fee、PSV、Assessment、Facility関連費用、コンサルティングフィー、成功報酬など、何にいくら支払うのかを明確にし、可能な限り契約や支払い条件を書面で確認することも重要です。

海外だから誰も信用しない、ということではありません。

人とのつながりを大切にしながらも、制度・契約・お金の流れは自分自身でも確認する。

それが、ドバイで医療に挑戦するときに自分を守るための大切なポイントです。

ドバイで医師・歯科医師・看護師として働くことに興味はあるものの、

「自分の資格でライセンス取得を目指せるのか分からない」

「どのProfessional Titleに該当するのか知りたい」

「海外転職に興味はあるけれど、まだ具体的には決めていない」

という方もいらっしゃると思います。

まずは情報収集からでも大丈夫です。

転職時期が未定でも相談可能です。

一般には公開されていない非公開求人の紹介が可能ですので、今すぐ転職する予定がない方でも、今後のキャリアを考えるための情報収集としてご活用いただけます。

ドバイをはじめとした海外での医師・歯科医師・看護師の働き方や求人について、LINEで気軽に相談できます。

「少し話を聞いてみたい」という段階でも構いません。

海外でのキャリアに興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。