美容外科医がSNSで陥りやすい失敗例まとめ
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これから美容外科医としてキャリアを築き、SNSで症例投稿のほか、自分を発信していきたいと考えている医師の方へ。どのようなSNS運用をすれば効果的にインプレッションを最大化できるのかを知ることは重要ですが、注目を集めることだけを意識した投稿は、知らず知らずのうちに倫理的・法的リスクを招くことがあります。
本記事では、実際に見られる不適切な投稿事例を交えながら、患者様からの信頼を守りつつ安全にSNS運用を行うために押さえておきたい医療広告ガイドラインのポイントを解説します。これからSNS運用を始める医師にとって、正しい発信の方向性を知るための最初の一歩として参考になれば幸いです。
本来の集患目的を履き違えた不適切なSNS投稿事例
美容医療の現場で日々患者様と向き合う中で、SNSの投稿が思わぬトラブルにつながるケースを目にすることがあります。本項では、単に注目を集めることを目的としてしまった投稿が、どのように患者様との信頼関係や法的リスクに影響するのか、現場目線で具体的な事例を交えて解説します。
症例写真の過度な加工
一部の美容外科医が、症例写真を過度に加工して施術効果を誇張する事例があります。
例えば、施術前後の写真を修正して、効果を過剰に強調したり、自然な肌のトーンやラインを美化するために色味や明るさを変えたりすることがあります。他には加工アプリで印象を操作した症例写真をそのまま掲載する事例も出ています。
これにより、患者様は実際の施術結果と大きなギャップを感じ、期待外れに終わる可能性があります。
こうしたギャップを防ぎ、真っ当に症例のクオリティを上げるためには、医師向けの研修で専門技術を学ぶことも有効です。
効果を保証するような断定表現
一部の美容外科医が、SNS投稿で施術の効果を過度に誇張し、「絶対に腫れません」「100%満足いただいてます」「永久持続」など、断定的な表現を使うことがあります。こうした表現は、施術の結果が個々の患者様によって異なることを無視した誤解を招き、患者様に過度な期待を抱かせます。
また、 医療広告ガイドラインでは、“確実性”や“効果の保証”を連想させる表現は禁止されています。医学的には個人差があり、結果を保証することは不可能なため悪用事例といえます。
麻酔後の膨張状態をビフォー写真として使用
美容外科医が、施術前に麻酔を施した後の膨らんだ状態を「ビフォー写真」として使用することがあります。麻酔によって体が通常より膨らむことは、手術の直後に見られる一時的な反応であり、実際の結果とは大きく異なります。これを「ビフォー」として使うことで、患者様が術後の状態と誤認し、施術後に実際の結果が異なることに対して不満を抱く原因となります。
このような手法は、SNSで一時的な注目を集めるかもしれませんが、長期的には患者様からの信頼を失う原因となり、法的なトラブルを引き起こす可能性もあります。
医師の経歴の誇張や専門医資格の自作自演
一部の美容外科医は、自身の経歴を水増ししたり、「〇〇認定専門医」などと活動実態のない専門医資格をSNSで誇張したり、虚偽の情報を記載することがあります。
例えば、実際には持っていない資格を「取得した」と主張したり、経験年数を水増しして「豊富な経験を持つ医師」と見せかける場合があります。また、特定の学会に所属していないにもかかわらず、「○○学会認定医」といった表現を使うこともあります。
このような自作自演の行為は、患者様の安全や業界全体の信頼性に重大な影響を与えるため、医師としての倫理を守り、正確で透明な情報を提供することが極めて重要です。
“バズる”を狙いモラルが破綻した手術事例
一部の美容外科クリニックが、SNSで注目を集めるために、極端な手術結果や不適切な施術後の演出を行うことがあります。その一例として、搾取した脂肪をニコチャンマークの形に見立てるというような、非常に不謹慎で不適切な手法が報告されています。
このような手法は、バズを狙って患者様の身体から取り出した脂肪を遊び心やパフォーマンスとして利用するものであり、モラルが完全に破綻しています。
美しさの考えを押し付ける心理的圧を与える投稿
一部の美容外科医がSNSで行う投稿は、特定の「美しさ」を過度に強調し、フォロワーや患者様にその基準を強制的に押し付けることがあります。
例えば、「真の美しさとは○○のような顔」「美しさは整形によって得られる」というメッセージが頻繁に投稿され、見た目や外見に対する過度なプレッシャーを与えることがあります。
このような投稿は、フォロワーに対して「自分もその美しさを手に入れなければならない」と感じさせ、心理的な圧力をかけることになります。
オペ中のインスタライブ
一部の美容外科医が、施術中にインスタライブで手術の様子をリアルタイムで配信する事例があります。
このような投稿は、手術をエンターテイメント化し、患者様のプライバシーを完全に無視した行為として問題視されています。
ライブ配信中に患者様の顔や体の詳細が映し出され、患者様本人の同意がない場合、重大なプライバシー侵害に繋がります。
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医療広告ガイドラインに基づく正しい投稿方法
美容クリニックのSNS運用は、医療広告ガイドラインに基づいて行う必要があります。これにより、患者様に対して正確で信頼性の高い情報を提供できるだけでなく、法律的なリスクも避けられます。
以下では、SNS投稿時に留意すべき医療広告ガイドラインの要点について、それぞれ解説します。
▼参考
No.1表記の根拠
「No.1」という表記を使用する場合、その根拠を明示する必要があります。例えば、「業界No.1の実績!」といった表現を使う場合、客観的な証拠やデータが求められます。
根拠を示さずに「No.1」を表記すると、虚偽の情報を提供することとなり、消費者に誤解を与えるリスクがあります。信頼性のある実績に基づいた表記を行うことが重要です。
実績やデータに基づいた「No.1」の表記を行い、その根拠を明確に伝えることが求められます。
実際のクリニックで得られた症例数、データ集計期間、データを取得した院名を明記して具体的な数値を示すようにしましょう。
症例写真にリスクや副作用の明記
症例写真を使用する際、施術に伴うリスクや副作用についても明記することが義務付けられています。
施術の効果を示すだけでなく、そのリスクや副作用についても正確に伝えることで、患者様に十分な情報を提供し、安心して選択できる環境を提供します。これにより、不安や誤解を避けられます。
症例写真に加えて、施術のリスクや副作用についても説明を加え、患者様が施術内容について十分理解できるようにしましょう。
誇大表現の禁止
施術の効果について過剰に誇張する表現は避けるべきです。
「○○術は変化量が乏しく、安全性が低いので、当院が新たに開発した○○術がおすすめです」などの表現は、医学的根拠を示していないにもかかわず、患者様に不正確な期待を抱かせる可能性があります。
誇大表現を使用すると、消費者に過剰な期待を与え、現実とのギャップから信頼を失うリスクがあります。施術は個人差があり、すべての患者様に同じ効果が現れるわけではありません。
施術の効果については、現実的かつ正確な表現を心掛け、過度な誇張を避けるようにしましょう。期待される効果の範囲についても説明を加え、患者様が納得できるように配慮します。
比較優良表現の禁止
「当院は県内一の症例数を誇ります。」などと他のクリニックや競合と比較して「当院が一番優れている」といった表現は控えた方が良いでしょう。
他院と比較して優位性を強調することは、他者を不当に貶めることに繋がりかねません。患者様に対して過剰な優越感を持たせることなく、当院の特徴を正確に伝えることが大切です。
自院の強みや特長を伝える際には、他院との比較を避け、独自の特色を強調することが望ましいです。患者様に対して透明性を持って、自院のメリットを説明しましょう。
治療効果を約束する表現の禁止
「絶対に成功する」「100%効果が出る」といった効果の約束は避けるべきです。
効果を約束する表現は、患者様に過剰な期待を抱かせ、結果として不満を招く可能性があります。施術には個人差があり、すべての患者様に同様の効果が得られるわけではないことを理解しておく必要があります。
施術の効果については、個人差があることを明記し、過剰な期待を与えないようにしましょう。また、施術後の経過や期待できる効果を現実的に伝えることが大切です。
治療効果に対する患者様の主観に基づく体験談の提示の禁止
患者様の体験談を基にした「治療効果があった」といった表現は慎重に行うべきです。
この場合、治療の効果以外のクリニックの接客の感想に対する体験談は提示できます。
治療効果に対する体験談は個別のケースに過ぎないため、他の患者様にも同様の結果が期待できるわけではありません。過度に強調すると、患者様に誤解を与え、信頼を損ねる恐れがあります。
体験談はあくまで一例として提示し、結果に個人差があることを伝えることが重要です。また、体験談を使用する場合は、患者様の同意を得た上で行うことが求められます。
環境を変えてキャリアを伸ばしたい方へ
まとめ
美容クリニックの集患におけるSNSの適切な運用は、患者様の信頼を得るために非常に重要です。
しかし、誇張されたビフォーアフター写真や無断使用された患者様の写真、過度な煽り表現など、広告の内容に不適切な要素が含まれる場合、法的なリスクや患者様の信頼喪失を引き起こす可能性があります。これにより、クリニックの評判が悪化し、最終的には集患に悪影響を与えることになります。
医療広告ガイドラインに基づき、誇張表現や無断での写真使用、過剰な効果の約束は避けるべきです。患者様に対して正確で透明性のある情報提供を行うことが、信頼の獲得に繋がります。
また、広告における誤解を招く表現や過度な煽りは、患者様を不安にさせ、結果的にトラブルを引き起こすリスクを高めます。SNSを活用する際は、規制を遵守し、倫理的な観点からも患者様の立場に立った広告を心掛けることが大切です。
これにより、長期的に安定した集患が可能となり、クリニックの信頼性を確保できます。






